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映画「おくりびと」や熊本県のPRキャラクター「くまモン」のプロデュース、京都の老舗料亭の経営など、さまざまなジャンルで活躍する小山薫堂さん。 小山さんが「あんなふうに生きられたら」と憧れる、山本彩香さんの魅力を聞いてみました。
小山 薫堂
小山 薫堂は、日本の放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティ。 株式会社オレンジ・アンド・パートナーズ代表取締役社長 兼 N35 inc代表、株式会社下鴨茶寮代表取締役社長、京都造形芸術大学副学長・芸術学部教授。前東北芸術工科大学教授。
人が人の生き方と出会える、それがローカルの魅力
小山さんが感じる、ジャパンローカルの最大の魅力とは?
その土地でこそ出合えるプロダクトや食ももちろんですが、最も魅力を感じるのはさまざまな商品や食の背景にある、“人の人生”というものに出会えた瞬間。人はそこに触れるために旅をしたいと思うのだと思います。
では、プライベートで地方を訪れる際に大切にしているポイントとは?
ひとつは、行った土地で人と触れ合える場所を探すこと。前述したように、人は人に出会い、コミュニケーションして、何かを感じ取る。そのために旅をするのだと思っています。ふたつめは、訪れたその地を味覚で感じられる、土地を代表するおいしいものが必須。“風土がFOODをつくる”のだと考えています。そして3つめ。旅には癒しも求めるので、心を揺さぶる風景も重要。
お気に入りのローカルシティを教えてください。
場所は、栃木県の日光市、北海道の美瑛町、京都、軽井沢とさまざま、そしてもちろん熊本県の天草も。それぞれに拠点となる空間が有り、大好きな友人がいます。
また、日光では「金谷ホテル」、美瑛はレストラン「バローレ」、京都だと鞄屋の「一澤信三郎帆布」、天草は鮨が絶品の「奴寿司」、宿「アレグリア」……とお気に入りで大切にしている場所もありますね。山形県のレストラン「ばんこう花」も!
2016年も、新宿にオープンした日本のモノ・コトをキュレーションする「BEAMS JAPAN」や宮城県のリゾート温泉「おゆのみや」など、多彩な地方創生に関わるプロデュースに携わっておられます。原動力は?
「BEAMS JAPAN」では、総合プロデューサーとして、主に地下1階レストランフロアの企画や調整、監修しました。ここでは「ビームス」のバイヤーが各地から探し出した、その土地を語る商品展開や、単なる『メイド・イン・ジャパン』には留まらない新しいプレゼンテーションに注目してもらいたいですね。
その他、地元・熊本県天草市では、アドバイザーとして町・人・ものをより豊かにするプロジェクトを市民に向けて提唱する「あまくさン」、新しいモノづくりに励む若きクリエイター、次期“匠”を支援する「レクサス ニュー 匠 プロジェクト」では総合プロデューサーとして日本各地の伝統工芸の活性化に取り組んでいます。また、京都の魅力を東京から世界へと発信する「京都館」の館長も務めています。
これらの活動を通して感じたのは、日本各地に存在する伝統は今、革新の中にいるということ。現在、あらゆるジャンルで日本の文化や伝統、芸術を後世に引き継ぐための挑戦が行われています。そこに注目していきたいですね。
小山薫堂の金銭感覚
財布は持ちません。カードは1~3軍に仕分けます」
「会食に行くときに邪魔」なので財布は常に使わず、エンリーベグリンの名刺入れに「1軍」と名づけた普段よく使うクレジットカード数枚と3万~5万円の現金を入れている。
名刺を出すときに現金が見えるのだけが難点とか。
ほかに「2軍」カード入れに一澤信三郎帆布製の名刺入れ、「3軍」はオレンジ色のポーチ に入れ、定期的に昇降格させる。小銭は小銭入れで管理。
クレジットカードは、普通の人は持って2~3枚。法人用のカードがあったとしても、5枚程度でしょう。でも、小山薫堂さんは、一軍カードだけで数枚、そして、それとは別に2軍・3軍カードがある。
少なく見積もって10枚以上はあるのではないのでしょうか?ただ、よくよく確認していくと、クレジットカードと一緒にポイントカードなども50枚一緒に常に持ち歩くという堅実さもお持ちのようです。
いくらお金があってもザルですくうようにドンドン使っていくと無くなってしまいますが、いくら稼いでも、仕事を楽しみ、お金を堅実に使う小山薫堂さんの姿に頭が下がりますね。
会議より、仕事より 大切なのはサプライズ!?
うちでは、2週間に1回「オレンジサロン」というのをやっていまして、社員が集まって雑談をしています。これを「会議」と名づけてしまうと、みんいろいろな案件を考えたりとかそういうふうなるんで、そうではなく、毎回お茶会のように亭主を決め、亭主になった人は予算5000円を与えられ、その5000円を持って、サロンを楽しくするための物を買ったり準備したりしなくてはならないんです。
例えばうちのある独身男は、豚汁をつくって、ご飯炊いて、豚汁とおにぎりで社員をもてなし、食べながらみんなで毎回あるひとつのテーマを話し合ったり雑談しあったり……。そういうことをしています。
もうひとつうちの会社で必ずやるのは「サプライズ」。「誕生日サプライズ」を必ずお祝いするんです。ある社員の誕生日に、他の社員がグルになって、何かその人が喜ぶことをする。毎回サプライズ部長と言うのが任命されます。で、1人1000円以内の参加費で実行できるサプライズをする、みたいなそういうルールがあって……。これまで本当にいろいろなサプライズをやりました。
結婚している主婦の社員がいると、内緒でだんなさんのところへ言って、だんなさんを酔っ払わせて、だんなさんから本音を聞き出し、最後に「愛してるよ」って言わせるビデオを撮るとか。あとは、実家が島根の社員の場合は、実家へ行って、彼の昔のこども部屋に入って、彼がどんな本を読んでいたかチェックをし、エッチな本を隠してないかを検査したり、いろいろなことをやって最後にお母さん手づくりの料理をいただいてビデオを撮って帰ってくるみたいな……。
それを見せたときに、「それって僕が食べるべきなんじゃないですか」って言われて。それで「もうパンはつくらなくていいから」となって、でも「ぱんこ」というあだ名だけは残りました。そのぱんこが出産のために退社するということになったので「ぱんこのためにサプライズしよう」と考えてビデオをつくりました。
言うなら彼女が主人公のテレビ番組。『情熱大陸』っていう番組がありますよね。毎日放送の人に頼んで「僕の情熱大陸をつくりたい」と言うウソの出演交渉をし「じゃあ、とりあえず『情熱大陸』がどういう番組か見てもらうためにDVDを送りますんで」って送られてくる。そのDVDをみんなで「見てみようか」って見ると、自分が主人公の『情熱大陸』ができあがっている……。そういうサプライズです。
これをやって以来、うちの全社員ははんこ屋さんの看板を見かけるとすごくしあわせな気分になるんですよ。四つ葉のクローバーを見つけずとも、はんこ屋の看板を見つけるだけで「あった!」「ここにあった!」「ここを忘れていた!」「これはいい大きさだ!」とか、そういうふうに思えるようになりました。
これは、本当に何でもない風景ですよね。誰もが見ている、同じように見ているけれど、ちょっとだけ視点を変えたり、ちょっとだけ見る眼鏡に違うコンセプトを持たせると日常がしあわせに見えてくる。あるいは日常の中に本当に四つ葉のクローバーを見つけることができる。これは、僕がいろいろなことをするときに参考になるというか、発想の仕方としていいなぁと思っていることです。
何が楽しいかって、想像するのが楽しいんですよね。人をしあわせにするのはすごくむずかしいことですし、すぐに結果が出ることでもないので、この人がこれをやったらどんなふうに考えるだろうか、っていう想像をしています。自己満足かもしれませんけど、僕はそこから始めるだけでもいいと思うんです。
人は知らず知らずのうちに最良の人生を選択しながら生きている
僕の人生は本当に行き当たりばったり人生。目先のものをどうクリアしていくか、あるいは目先にある分岐点をどこがいちばんいいかを選びながら生きてきているという、そういう感じがあります。
僕の親父は僕以上に楽天家なのですが、そんな親父に言われたのは「人は知らず知らずのうちに最良の人生を選択しながら生きている」ということ。
人生というのは常に枝分かれ、いろいろな瞬間に枝分かれていろいろな人生が流れて行くけれども、自分が選んだものがきっと最後にいちばんいいゴールにたどり着くようになっている。
例えば目の前では失敗しても、あるいは目の前では「大変なことになったな」と思っても、振り返ったときに「そこでああだったからいまがあるんだな」とか「もしあそこで成功していたら、いまもうこの世にいないんじゃないか」とか、いつもそういうことを考えていると、目の前の失敗であるとか、何か不幸に出会ったときも積極的な思いでそれを捉えながら生きてきました。
大学4年のときに交通事故に遭ったんです。友人が買ったばかりの車を借りて走ってたら、正面衝突、車がペチャンコになったんです。僕はケガをしなくて、信号無視をして飛び出してきた相手の人がケガをしました。
そのときに僕は「よかった。もしここで、この人が僕の前に現れて僕を遮らなかったら、僕はこの先誰かを轢いていたかもしれない。きっとここでぶつかることが最良だったんだ」と思ったらすごく楽になりまして……。で、車を貸してくれた友だちに電話して、すごくウキウキと「ぶつかったんだよね。車もペチャンコになってるんだけど」って言ったらえらく怒られました。
まとめ
放送作家 小山薫堂氏は、僕の故郷の山形をロケ地にした映画「おくりびと」の脚本を書かれたり、同じく山形にある東北芸術工科大学の教授をされていたりするので、勝手に親近感を持っている。
日経新聞8月19日夕刊の「学びのふるさと」と言う記事から。小山氏の父の教え、『人は知らず知らずのうちに最良の人生を選択している』という言葉。
今の自分は過去の自分が選択した未来にいる。過去の自分の選択は最良だった。だから、今の自分は最も良い場所にいる。僕たちのいる場所は、過去でも未来でもない。『今』なのだ。『今』を肯定すれば、過去も未来も人生全てを認められる。
過ぎ去ってしまってどうしようもない過去ではなく、いつ来るかわからない未来でもなく、今 目の前にある現在を肯定し、大切に生きること。
そんな気持ちを胸に映画「おくりびと」を思い出すと、今を精一杯に生きる人々のつながりが物語を作っているような気がする。
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