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稲盛和夫
稲盛 和夫は、日本の実業家。京セラ・第二電電創業者。公益財団法人稲盛財団理事長。日本航空名誉会長。
京都で学生生活を送っていたころ、よく仲間と就職活動や進路のことで次のような冗談を言い合っていた。
「あいつはソニー信者だから」
「おれはホンダ教に入るわ」
独特の経営カラーのある有名企業のことを「○○教」と呼ぶのだ。悪ふざけの学生気分と言えばそれまでだが、どこか組織の一部になることへの抵抗感や警戒感をはらんでいたような気がする。
で、その会話の中で一番よく登場するのが「京セラ教」もしくは「稲盛教」だった。軍隊のような厳しい組織だとか、創業者・稲盛和夫氏の著書の読書会をやらされるとか、卒業生を経由して伝わってきたのはそんな話だったと記憶している。
「稲盛教かー、がんばってな」
と、京セラ内定者と笑い合っていたのもすでに一昔前のこと。
いまや稲盛氏と言えば、日本で最も高名な経営者だ。
1932年(昭和7年)鹿児島県生まれ。1959年、27歳のとき京セラを創業して経営者となった。1984年、現在のKDDIに当たる第二電電(DDI)を設立し、2010年には、当時の民主党政権から経営破綻した日本航空(JAL)の再建指揮を依頼され、78歳で会長に就任。それからわずか3年で業績をV字回復させ、JALは再上場、金融機関以外では最大規模の破綻から見事に再建を成しとげた。
たしかに「最強」と言ってもいい経営手腕だ。
しかし、彼の人気がある理由は、単に会社の業績をよくするからではないだろう。『生き方』(サンマーク出版)というタイトルの本がベストセラーとなっていることからもわかるように、人間としてのあり方や人生論を彼から学ぼうとする人が多いからだ。
ここで、ひとつの素朴な疑問が出てくる。人間として、稲盛氏は一体どこがすごいのだろうか。経営者がその鮮やかな手腕に憧れるのはわかる。では、経営者でもリーダーでもない庶民の感覚で著書を読むとどうなるのか。啓発され、人生の師として見習いたくなるのか。それとも響かないのか。
ちなみに、筆者は今回初めて稲盛氏の本を読んだ。世代が違いすぎることもあって、あまり興味を感じなかったのだ。BPnet読者にも、筆者と同じように、名前はよく聞くが実際に読んだことはないという人も多いだろう。
そこで今回は、称賛でも批判でもなく、客観的に稲盛氏の経営理論や人生哲学を読み解き紹介してみよう。
JALを復興させた
まず、いま改めて稲盛氏が注目を集める理由である「JALの再生」が、どんなものだったのか知るために『稲盛和夫 最後の闘い――JAL再生にかけた経営者人生』を読んだ。日経新聞編集委員によるドキュメンタリー風の作品だ。
経営破綻したJALに稲盛氏がやってくる。大規模なリストラと公的資金による経営再建と同時に始まるのが、社員の精神の再建だ。経営幹部の全員と1対1で面談し、リーダー教育を行う。始めは「お手並み拝見」とばかりに斜に構えていたJALエリートたちも次第に稲盛氏の言葉に心が動かされていく。
たとえば、稲盛氏は、中村天風の言葉「新しき計画の成就は只 不屈不撓の一心にあり さらばひたむきに只思え 気高く強く一筋に」を大きくプリントし、オフィスに貼ろうとする。
自己啓発丸出しの標語に戸惑うJAL職員だったが、その剣幕に押されて渋々受け入れる。さらに仕事に対する姿勢と考え方である「フィロソフィ」をカードに印刷して持ち歩いたりしているうちに、だんだん職員に当事者意識が芽生えてくる。
このような事例を通じて、著者が訴えるのは「もっと謙虚になって人々は稲盛氏のJAL再生劇から学ぶべきだ」ということだ。
たしかにJAL再建は日本にとって必要というのが一般的な見方だった。だが一方で、公的資金が注入されたとか、法人税の免除があったとか、再上場で儲けた人がいるとか、公正な競争が阻害されたとか、批判も多い。
そんな見方に対して、著者は、稲盛氏が語ったJAL再建を引き受けた理由を引いて次のように言う。
JALでの壮絶な闘いを語った後、本書の後半は、稲盛氏の私生活や京セラが大企業になる以前のエピソードなどが紹介されている。そこで描かれているのは、仕事に異常なまでの熱意を持って打ち込み、仕事を通じて人間としてのよりよい生き方ができると信じている稲盛氏の姿だ。
全体を通じて、ちょっと褒めすぎのような気もする。しかし、こういう人がいるのを間近で見てしまったら、惚れ込むのもしょうがないのかもしれない。
「経営者以上に指導者」だからすごい
『稲盛和夫 最後の闘い』で描かれているのは、生きる屍となった巨大組織、JALが心を取り戻す物語だった。
官僚より官僚的な組織機構、プライドの高い高学歴エリートたち、8つの労組にがんじがらめにされ何もできない経営陣という状況で、文字通り形骸化したJALが、「お客さんにサービスを提供する」という航空輸送業の原点に立ち返り、再出発する。
このJAL再生劇は「リボーン」という言葉を思い起こさせる。ジョージ・W・ブッシュ大統領が40歳のとき突如、信仰に目覚めてアルコール依存症の克服を決意した話が有名だが、要は啓示のようなものによって、過去の自分と決別し、生まれ変わるという体験だ。
運行のことしか考えていなかったJALが、お客さんの気持ちを考えるようになっていく変化は、まさに「リボーン」だろう。
でもこれって、どっからどうみても宗教だよね? という気もしてくる。
そんな違和感に答えてくれるのが、2冊目の『虚飾の経営者 稲盛和夫』だ。
本書はジャーナリスト・斎藤貴男氏と評論家・佐高信氏による対談に、斎藤氏が京セラや盛和塾(稲盛氏が主催する経営者のための塾)、稲盛氏本人などに取材して書いた原稿〈京セラ「稲盛和夫」という呪術師〉をセットにしたもの。
いわゆる批判本だが、人間としての好き嫌いとは一線を画し、きちんと過去の稲盛氏の発言や関係者の証言など、事実のみを引いて問題提起している。マスメディアに出てくる顔とは違う稲盛氏の一面を知ることができる1冊だ。
この本を読むと、「稲盛イズムは宗教だ」というのは批判には当たらないことがよくわかる。実際、稲盛氏は僧侶だ。1997年に臨済宗の寺で在家得度している。僧侶が業や徳について語るのは当然だろう。
宗教にも似た独自の思想を持った経営者はいくらでもいる。アップルもグーグルも、単なる金儲けではなく「テクノロジーで世界を変える」という信仰に突き動かされて事業を展開しているという言い方もできるだろう。
問題は、そこに巻き込まれる労働者がどうなるか、だ。
斎藤氏は、企業が稲盛氏のように思想で人を束ねることの危うさを次のように指摘する。
極論すれば、会社を宗教化することで、給料がゼロでも従業員は笑顔で働いてくれる。松下幸之助が、ボランティア労働する天理教の信徒たちを見て、一体感のある強靱な会社組織をつくる方法を思いついた話は有名だろう。
しかし、この手法がいわゆる「経営科学」として世の中に広まるとどうなるか。
夢や理想主義といった善意から、ブラック企業も真っ青な搾取構造が生まれるかもしれない。
トップは「経営者」としてカネだけで労働者と結びつくべきか、それとも「指導者」として労働者と思想的に結びつき、生き方まで導いていくべきか。
稲盛氏は後者に特化したトップだ。京セラの経営スローガンは「労使同軸」。労使対立がないのではなく、「労使」という概念がないのだ。その手法を使って稲盛氏は、誰も並び立つことのできない成果を残している。
企業の競争力を高めていくためには、トップが思想的に労働者を導き、能力を引き出していくことが必要だということなのだろうか。
「燃える闘魂がある」からすごい
このようなモヤモヤした気持ちを抱えたまま、いよいよ本人が書いた本、『燃える闘魂』を読み始めると、まず驚いた。
JAL再建を成しとげた稲盛氏が日本に贈る提言――。それはこれ以上ないほどシンプルなものだった。
低迷にあえぐ経営者やリーダーに稲盛氏は言う。
現在、業績低迷をつづけている理由を、経済環境や市場動向などに求める経営者が多い。また「六重苦」と言われるように、業績不振の理由を、他に転嫁することに躊躇しない経営者も多く見受けられる。そうではない。現在の日本経済、日本の社会にとって、何が一番足りないのか。それは、不屈不撓の心である。何があろうとも、どんな障害があろうとも、それを乗り越えていくという強い意志、勇気、気概が、日本企業のリーダーに欠けていたことが、現在の停滞感、閉塞感漂う日本の経済社会をもたらした真因ではないか。いまの日本に必要なのは、この「負けてたまるか」という強い思い、いわば「燃える闘魂」である。(燃える闘魂/P.20)
この全206ページの本に書かれていることは、これがすべてだ。
とくに説明することもないだろう。
命を賭し、全身全霊をかけ、火の玉になってやれば、不可能はない、どんなことでも必ず成しとげることができる。疑う者は京セラを見よ、JAL再建を見よ、と。
純粋な精神主義には、一分の隙もないということがよくわかる。
81歳の日本一の経営者に、こんなことを言われたら誰も反論できないだろう。
『稲盛和夫 最後の闘い』に登場するJAL子会社のJALウェイズ社長(当時)のエピソードがおもしろい。先輩たちの放漫経営による負の遺産と闘い続けてきた彼は、JAL再建がいかに困難かを知り尽くしている。
稲盛氏について「このじいさんの力量は本物か」と様子をうかがっていたが、リーダー研修で稲盛氏の言葉を聞くうち、ついに彼は「私が間違っていました」という言葉を発する。そして、JALウェイズに戻った彼は、社員に稲盛イズムを説くようになる。
「じいさんの言っていることがすべて正しいと、全面降伏したわけではない。受け入れられない部分もあった。しかし、ゼロから会社を作ったたたき上げの人間にしか言えない、正しい部分もあった。自分で正しいと思ったことは、下に伝えるべきだと思った」(稲盛和夫 最後の闘い/P.44)これを読むと、やはり稲盛氏でなくては、JAL再建はできなかっただろうと思えてくる。
稲盛氏は、盛和塾で「仕事を通して魂を浄化することができる」(『虚飾の経営者 稲盛和夫』)とまで語っている。99.9%の人は、そこまで仕事を思い詰めていない。
「一点の曇りもない」からすごい
稲盛氏には「できないかもしれない」という恐れが一切ない。宗教的バックボーンに加え、経営者としての経験と実績があるからだ。さらに、彼にはその信念を個人レベルにとどめるのではなく、世の中を巻き込んでいく意志、「燃える闘魂」がある。この希有な人間性は、JAL再建を引き受けたときの心理にも、よく表れている。
無給で取り組んだJAL再生も同じだ。動機が正しいのだから自分が負けるはずはない。
ピンチの連続だったJALでの3年間、「失敗するかも、と考えたことは一度もありません。そういうネガティブな気持ちを一度でも持ったら、本当に失敗していたかもしれませんね」。
「自分は正しい」
一点の曇りもなくそう信じ込めるところが、稲盛の強さである。(燃える闘魂/P.108)
JAL再建を引き受けるか、稲盛氏はすぐに答えを出そうとしなかった。民主党の前原誠司国交相(当時)は、何度も、何度も京都に足を運んで頼み込んだ。しかし、彼は引き受けるかどうかは迷っても、再建ができるかどうかは迷っていない。
自分が必死でやればJALは復活できるという点は、まったく疑問を持っていなかったことがここからわかる。正義を、やればできることを一点の曇りもなく信じ込める人間。たしかに、『燃える闘魂』の帯にも書いてある通り、「最強経営者」である。
ところで、われわれ日本人は燃える闘魂を一体どうやって持てばいいのか。感情なのだから「持て」といわれて持てるものではない。結局は、この本を読んで熱い気持ちが湧いてくるか、湧いてこないかだろう。
一方で、80歳を超える老人が説く「闘争心」に啓発されなければならない日本の社会というのは、これからどうなるのかという思いが残った。
ここだけは押さえておく3冊の要点まとめ
『稲盛和夫 最後の闘い』
●稲盛氏はJALという組織のシステム以上に精神を復興させた
●たたき上げの人間にしか言えない生身の言葉がJAL幹部の心を動かした
●人々はもっと謙虚にJALのV字回復を成しとげた稲盛氏から学ぶべき
【こんな人におすすめ】
→ゾンビのような組織に魂を吹き込む思想的リーダーとしての手腕が学べる
●稲盛氏は宗教的高揚に組織全体を巻き込む手法で、労働者を安価に使っている
●稲盛イズムの原点は宗教家・谷口雅春の著書『生命の實相』
●個々人の覚醒をうたっているのに、指導者が君臨するというところに自己啓発の矛盾がある
【こんな人におすすめ】
→宗教的な手法が経営に使われているという実態も知っておくべき『燃える闘魂』
●日本の経営者には闘争心、「なにくそ」という強い気持ちが足りない
●弱者をいたわる気持ちも大切だが、それだけではダメ
●神に祈るしかないほど、最後まで仕事に努力と創意工夫を重ねよ
【こんな人におすすめ】
→共感・啓発・反感など、とにかく気持ちをかき立てるものがある
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